229日(金)

 アトピー性皮膚炎の治療薬にステロイド外用剤があります。これをお読みの方の一部の中で“ステロイドは怖い”というイメージをお持ちの方はいませんか?
 かつてステロイドはとても怖いという風潮がありました。今でもそういった人はいますが、以前に比べて少なくなっているように思います。幾分ホッとしています。
 ステロイドの内服は確かに多くの副作用があります。それでも注意深く使用すれば、その副作用は最小限に抑えることができます。膠原病などの病気では、ステロイドの内服が多くの場合必須で、止めると死に至ることもあります。そのようなステロイドを内服しなければならない患者さんに、「ステロイドは怖いから止めたほうがよいですよ」とは誰も言いません。ステロイドを安易にやめて病気が悪化したら、それを言った人が制裁を受ける立場になるからです。
 しかしステロイド外用剤に関しては、平気で“怖い”といいます。
言い方は悪いのですが、アトピー性皮膚炎の場合は、ステロイドを止めて悪化しても、決して死に至ることはないのです。だから「ステロイドは怖いから止めなさい」といえるのではないでしょうか。

 ちなみに、ステロイド外用剤の怖さを喧伝するいくつかの「ウソとホント」があります。「はい」か「いいえ」で答えてみましょう。

1)ステロイド外用剤を一度使用するとやめられなくなる。

2)ステロイド外用剤を中止するとリバウンドが起きる。

3)ステロイド外用剤を使用すると、骨がぼろぼろになる。

4)ステロイド外用剤を使用すると、ニキビ、おできなどができやすくなる。

5)ステロイド外用剤を使用すると、色が黒く残ってしまう。

6)ステロイド外用剤は皮膚に蓄積する。

7)ステロイド外用剤を長期間使用すると。血管が浮いて、皮膚が薄くなる。

この中で正しいのは4)と7)です。4)もかならず起きるわけではなく、むしろ体調(体の免疫力)の方がおおきく作用します。7)は皮膚がとても薄い顔面で発症しやすいことがわかりました。以前そうした副作用が多く出たので、今や顔面には一番弱いステロイド外用剤を短期間使用するようになっています。

他の質問は実はまったくのいいがかりなのです。

 「ステロイド外用剤を使用すると黒く残ってしまう」ということに関しては、ある皮膚科医が、5年間毎日自分の上腕につけてまったく黒くならなかったという報告を聞いて、その努力に感激した記憶があります。黒くなる原因はアトピー性皮膚炎の皮膚炎を放置しているからなのです。
 これらの質問の結果から、いかにいい加減な情報が流れているかお分かりになるでしょう。
 なぜこんなことになったのでしょうか。ステロイドの内服ではそれほど非難されないのに、外用剤ではステロイドはいつも“悪者”なのです。
 その理由のひとつに「アトピービジネス(民間療法)」があります。「アトピー性皮膚炎患者を対象とし、医療保険診療外の行為によって、アトピー性皮膚炎の治療に関与し、営利を追及する経済活動」と、金沢大学大学院皮膚科教授 竹原和彦先生が明確に定義されています。
 この人たちにとってはアトピー性皮膚炎を治療する皮膚科医は敵なのです。ましてやステロイド外用剤などを使ってうまく治したり、あるいは病気をコントロールされては困るのです。皮膚科に行くと「怖いステロイドが処方されますよ」という宣伝は相当に効果的で、まさにその通りになってしまいました。
 そして、アトピー性皮膚炎の治療に、皮膚科の中でも一時大混乱がありました
 しかし、根気強くその事実を検証して、今やアトピー性皮膚炎のガイドライン(厚生労働省、日本皮膚科学会、つい最近アレルギー学会からも報告されています)の中でステロイド外用剤の必要性が強調されています。
  結局、アトピー性皮膚炎の治療に関しては、皮膚科専門医という専門家の意見に従った方が無難だと思います。疑問があったら納得できるまで質問したらいかがでしょうか。
 つい最近の診察でも「ステロイドは使いたくないのですが」という疑問がありました。お互いに納得できるようにお話したつもりです。
 止めるのも、続けるのも本人の自由です。しかし止めることで病気が悪化したり、苦しむようなら、何のための拒絶でしょうか。今や皮膚科医は、少なくとも副作用を出さないで、ステロイド外用剤を合理的に使用できる環境とスキルが整ったと断言できるように思われます。