アトピ−性皮膚炎ついて




Q.アトピ−とはなんですか?

 アトピ−という言葉を聞きますと、皆さんはアトピ−性皮膚炎という皮膚
疾患を思い浮かべるでしょう。それほど、現在では社会問題化している病気
といえましょう。
アトピ−とは、通常な抗原に対して、IgE抗体を産生しやすい遺伝的素因
をさしています。ドイツの有名な医者がその言葉を使用して、特有な湿疹様
病変にアトピ−性皮膚炎という病名をつけました。そもそも、その時点から
アトピ−性皮膚炎という病気に間違った概念が生まれたように思われます。 
確かに、アトピ−性皮膚炎の患者さんには、他のアトピ−性疾患であるアレ
ルギ−性鼻炎や喘息を合併しやすい側面はありますが、だからといってアト
ピ−という用語を使用することは行き過ぎであったと現在反省されているのが
現状です。つまりアトピ−性皮膚炎は、アトピ−といった狭い現象だけでは
説明がつかない皮膚疾患なのです。  
前置きはこれぐらいにしまして、現在アトピ−性皮膚炎とは、アトピ−素因を
もった個体に、様々な発症の引き金が加わって、結果的に湿疹様病変を繰り返
す病気であると定義されています。


Q.アトピ−性皮膚炎は大変困った皮膚病と言われていますが本当ですか?

  最近マスコミ等で大きく報道される機会が多くなり、大変な病気である
という風潮があるようです。しかしながら、皆さんが心配しているいわゆる重
症なアトピ−性皮膚炎は頻度としてはそれほど多くはないのです。
むしろ、いずれ治る乾燥性皮膚や乾燥性湿疹が多く、それらもアトピ−性皮膚
炎の中に含められているのです。逆にいいますと、アトピ−性皮膚炎は非常に
範囲の広い皮膚病変であり、そのごく一部の患者さんが重症になるというのが
実際なのです。
                                                   

Q.アトピ−性皮膚炎は食事が原因だと聞いていますが?

  以前は、一部の医師がアトピ−性皮膚炎の原因として食事とくに牛乳や卵
に注目していました。確かに生後2−3歳までは、消化管の吸収等がまだ未熟
なこともあり、そのために食事によって特有な反応が起きやすいことは事実
です。しかしながら、そのことだけでアトピ−性皮膚炎の原因の全体を説明す
ることには無理があり、最近では食事制限に関してはもっと慎重に対応すべき
であると言われるようになってきています。そもそも一番栄養が大切な時期に、
なんの根拠もなくただ牛乳や卵を止めてしまうお母さんがいますが、結果とし
て小学生の高学年になって体が小さいといった現実が時に見受けられます。
とても残念なことです。私の子供の頃は、今とは逆に沢山牛乳を飲みなさいと
いって育てられたものです。  
食事制限に関しましては、医師や専門家とよく相談しながら、あきらかにその
子にとって悪いものを探しだし、そしてそれを適切に除去しなければなりませ
ん。ちなみに、一つの目安として、その子に合わない食事を摂取した場合、原
則として必ずある特有な皮膚反応が起こると思って下さい。その食事を食べて
反応が起きる場合もあり、ない時もあるようでしたら、別な原因も検討してみ
るべきです。


Q.それでは、アトピ−性皮膚炎の原因は一体何でしょうか?

  先程、アトピ−性皮膚炎の発症にはいろいろな因子が引き金になると述べ
ました。引き金となりうる因子としては、アレルギ−性の反応も重要ですが、
ストレス、感染、掻くこと、発汗、乾燥などの非アレルギ−的な要因も極め
て重要な因子なのです。最近の大気汚染や環境破壊も重要な増悪因子である
と、私は考えております。  
最近皮膚科的には、皮膚のバリア−機能の低下が注目されています。
よくテレビのコマ−シャルで聞くセラミドなどは皮膚のバリア−機能に大き
く関与していますがそれらの異常がアトピ−性皮膚炎では指摘されてきました。
皮膚は,人体では最も大きな臓器とも考えられますが、その最も大切な役割は
いろいろな外界からの刺激から体を守ることです。その際、皮膚のバリア−
機構がとても大切で、その破綻がアトピ−性皮膚炎に移行する可能性が示唆
されてきています。
バリア機能が破綻しますと、外界からの非特異的な刺激に過敏となり、また、
ダニやハウスダストなどの環境アレルゲンの侵入が容易となるため、非アレ
ルギ−そしてアレルギ−の両面で重要な意味をもってきます。 
勿論、バリア−機能の異常だけではなく、その他の増悪因子も考えて総合的
にアトピ−性皮膚炎の原因を考えなくてはなりません。


Q.治療法はないと聞いていますが?

  そんなことはありません。
アトピ−性皮膚炎といっても先程述べましたように、いろいろな程度があり
ます。
例えば、ただ単に皮膚が乾燥している状態(乾燥性皮膚)やあるいは、それ
に湿疹病巣が加わった乾燥性湿疹の状態などは、適当なそれもごく軽い軟膏
でコント−ルが可能です。しかしながら、最近注目されている重症なアト
ピ−性皮膚炎、ことに顔面の発赤が強くなることの多い成人型アトピ−性皮
膚炎などは、医師の指導のもとでしっかりと治療しなければなりません。
その際、医師との信頼関係・連繋をしっかりととって、患者さん自身納得で
きる治療を選択しなければなりません。


Q.ステロイドは恐い薬と聞いていますが?

  一部の人達やマスコミは、ステロイドを過剰に警戒しているように思
われます。そもそもステロイドといっても、その強さのランクが5段階に分
けられていることはあまり知られていないようです。残念ながら、ある程度
以上のアトピ−性皮膚炎の皮膚病変にはステロイド以上によく効く薬は現在
見つかっていないというのが現状です。(現在、ステロイドかわる薬が研究
中ないしは開発中です。)
ですから、原則的には適当なステロイド軟膏を短期間(!)適切に使用して、
良くなったらステロイドの入っていない軟膏でスキン・ケアをする方法がよ
りよい治療と考えられます。
なぜなら、アトピ−性皮膚炎の病変はあくまでも皮膚に起こる様々な炎症反
応であり、原則としては皮膚からの治療が最も効果的です。
よく「体質改善」をしましょうという言葉を聞きますが、残念ながら誰でも
そんなに簡単に体質改善などできるものではないのです。
そもそも「体質」とは一体なんなのでしょう?


Q.民間療法によい方法があると聞いていますが?

  これほどアトピ−性皮膚炎に民間療法がはびこっているのは、私達皮膚科
医の責任でもあります。
ですから、現在日本皮膚科学会でも重点的にアトピ−性皮膚炎の診断基準や
治療指針を強力に提唱しています。
治りにくくそれで死に至らない病気が、民間療法の対象になることが多いよ
うです。私も、そのすべてが駄目であるとは思っていません。
もし、本当に有効な治療法であれば、アトピ−性皮膚炎である私自身も使用
してみたいと思っているのです。 
一つの基準として、民間療法を担う人達が私達皮膚科専門医を誹謗するよう
な対応ではなく、むしろ何故効くのかというプロセスが私達皮膚科医にも理
解できるような治療法ですと安心できるかもしれません。
残念ながら現在、民間療法の多くは無効であるように思われます。
できましたら効く効かないにかかわらず、私にもそれらの治療を教えて頂き
たいものです。よい治療法がありましたら、私自身早速試してみましょう。

Q.アトピ−性皮膚炎のことをよく知りたいのですが?

  そうした目的でこのホ−ム・ペ−ジを作りました。
アトピ−性皮膚炎でわかっていることと、そうでないことをしっかりと理解
することはとても大切なことだと思います。そのためには、忙しい診療時間
だけで説明することは不可能です。アトピ−性皮膚炎にお悩みの方あるいは
疑問に思っている方はe−mailで質問して下さい。
私も時間の許すかぎり、このホ−ム・ぺ−ジにその答えを掲載していくつも
りです。皆さんとともにこのホ−ム・ペ−ジを充実していきたいと思います。
とりあえず今回、まだ初歩的な部分しか触れていませんが、あえてアトピ−
性皮膚炎だけの項目も作りました。 私に分からないところは、その分野の
専門家にお聞きし、その情報も開示したいと思っております。
できましたら、アトピ−性皮膚炎に関する新しい情報の「場」にしていきま
せんか。よろしくお願い致します。