女性も体を洗い過ぎずに
服部 瑛
(朝日新聞 1999年 3月11日 掲載)
六日の声欄「洗い過ぎるな赤ちゃんの体」を興味深く読ませていただいた。
私は昨年の二月に、約五百人の患者さんを無作為に選んで、入浴とせっけんの使用状況について調べ
た。そして驚くべきことに、それほどおふろに入る必要のない寒い時期であるにもかかわらず、ほとんどの
人たちが毎日、入浴している事実を確認できた。
その中でも、女性はその傾向が著しく、液体せっけんを多用し、ナイロンタオルでこすっている、という実
態が明らかになった。
皮膚の最も大切な役割は、外界からのいろいろな刺激から守るバリアとしての機能である。皮膚の皮脂
膜や細胞間脂質などがバリア機能として重要視されているが、過度の入浴やせっけんの使用はそれらの
バリアをはぎ取ってしまう。
若い女性の多くは、ばい菌が肌に付いているのはよくないと錯覚し、毎日入浴し、ゴシゴシ洗っているフ
シがある。その結果、皮膚は乾燥し、そしてかゆくもなってくる。
そうした女性は、育児においても子供にも毎日入浴させる結果になっている。また最近流行の液体せっ
けんは、固形せっけんに比べて使用量が多くなる傾向があり、環境汚染の面からの問題が大きいように思
われる。
赤ちゃんの体だけでなく、多くの、特に若い女性方の洗い過ぎにも是非、注意しましょう。