一昔前には、小児は足白癬に罹患しにくいといわれたものでした。 ところが最近、小児でも足白癬罹患率が高くなっているのではない かと指摘する専門医が増えています。今夏、小児の足白癬罹患の現 状を調査された高崎市のはっとり皮膚科医院の服部瑛先生に、小児 の足白癬罹患の実態について語っていただきました。 Q:今夏、小児の足白癬罹患頻度を調べられたそう ですね 5〜8月の4か月間、典型的なズック靴皮膚炎などを除いた、足白癬 と疑わしい0〜12歳の小児51例(女児30、男児21)を対象に真菌検査 を行ったところ、49.0%(25/51例)の症例が陽性例でした。実感とし て、小児の足白癬は増えているという印象です。また、ズック靴皮膚 炎などの足のかぶれと足白癬とは、臨床的に区別することは困難な場 合が多く、従来から指摘されているようにしっかりと真菌検査をしな ければならないと思われます。この中で、生後8か月の幼児2例と1 歳3か月の1例に足白癬が認められた事実は、私にとって少なからず 驚きでした。 Q:まだ歩くか歩かない年頃で、どのようにして足 白癬に罹患したのでしょうか? 確かに、まだハイハイかよちよち歩きの時期に罹患しているのですか ら、感染経路に興味がもたれます。実は、0歳児を含め、足白癬に罹 患していた小児の両親の一方、あるいは両方が足白癬に罹患していま した。すなわち、家族感染なのです。 Q:いくら家族内感染とはいえ、どのような条件で小 児まで感染が及ぶのでしょうか? 現代の住環境も大きく影響していると思われます。バスマットを含め、 最近はフローリングの床に絨毯を敷いている家庭が多いため、両親、 あるいは同居者に感染源となる白癬菌がついていれば、感染リスクは 十分高くなると思います。それと、群馬県では健康ランドなどを家族 で利用する人が多くなってきましたが、そこでは絨毯が敷きつめられ ている場合が多く、しかも集団でバスマットを利用するような場所へ の出入りがあるわけですから、感染の一因になるのかもしれません。 Q:わが子の白癬罹患に対して、通常、両親はどの ような対応をされますか? 感染源である両親に、「お子さんは水虫ですよ」と告げますと一様に 驚き、かわいいわが子にうつしてしまったという自責の念から、自身 の治療のときとは比較にならないほど、熱心にお子さんの治療をして くださいます。もちろん、感染源としての、ご自分の治療にも以前と はうって変わって、真剣に取り組んでいただけるようです。 Q:しかし、治療に根気のいる白癬を退治するのは、 並大抵のことではないはずですが? そのとおりです。入浴時には、お子さんの足の患部を、指の間まで石 鹸をつけて、ていねいに洗ってあげるように指導しています。当然、 お風呂上がりに使うバスマットもこまめに洗濯しないといけません。 そして、一番肝心な治療に関して、私は足白癬に罹患している家族に 対し、お子さんも含め全員、ビホナゾールのような1日1回塗布型の 抗真菌剤を毎朝つけるように指導しています。 Q:通常は、入浴後に抗真菌剤をつけるのが効果的 だといわれますが・・・ 確かに入浴後でももちろん効果的ですが、私自身の経験から、夜抗真 菌剤を塗布してみますと、ふとんを汚したり、床がベタベタになって あまり気持ちのよいものではありません。こういったことも水虫の患 者さんが抗真菌剤を長期につけることをいやがる一因に、またコンプ ライアンスに影響を及ぼしているように思います。しかし、毎朝、抗 真菌剤を患部にやや厚めに塗布した後、靴下をはいてしまえば、むし ろ、靴下をはいている間中、薬効は保持されると思われます。 Q:逆転の発想で、抗真菌剤塗布の効果をあげてい るわけですね? 小さなお子さんは靴下をはきたがらず、すぐ靴下を脱いでしまうので、 白癬に感染しやすく、ズック靴皮膚炎なども発症しやすいのではない でしょうか。靴下をはいて、しっかりと患部にくすりをつけてあげれ ば、治癒もはやまるし、再感染の予防にもなるように思います。 <実地医家のための皮膚疾患−春・夏・秋・冬に掲載>