今回より、皮膚科医の立場から「老化と皮膚病変」について、何回かに分けて質問にお答えし たいと思います。 まず第一回じゃ老人性の乾燥皮膚とそれに伴うかゆみについてです。 Q:年をとると皮膚は乾燥すると言われていますが? 若いときのみずみずしい肌は、老人になるにつれて乾燥し、光沢を失い、亀裂 が出来てきます。これを老人性の乾燥皮膚といいます。特に腰部、四肢ことに 下腿で顕著です。65歳以上の方を観察しますと、およそ80%はこの乾燥皮膚が あると言われております。早速、自分の皮膚を観察してみて下さい。乾燥して いませんか。ひどい場合は魚のうろこのようになってきます。 最近、冷房や暖房器具の普及により、一般家庭では低湿度の環境になって来ま したので、ますます乾燥皮膚は多くなってきたように思います。勿論、この乾 燥皮膚は夏に比べて乾燥の強い冬に悪化します。
Q:乾燥皮膚はかゆみを伴うと聞きましたが、本当ですか? 程度はさまざまですが、そのとおりです。ひどい人では夜も眠れないほどのか ゆみを伴ってきます。掻けば掻くほどかゆみが増強して、新たに湿疹性の皮膚 病変が生じてきます。また、かゆみは暖まると増強します。お風呂から上がっ たあと、お酒を飲んだあと、あるいは床に入ってから強くなってきます。
Q:治療法はありますか? 乾燥皮膚である程度のかゆみがありましたら、面倒臭がらないで近くの皮膚科 に、是非行ってみて下さい。適当な内服と軟膏をつけるだけでウソのようにか ゆみがなくなります。勿論、この効果は一時的ですが、定期的に軟膏をつけ ることで快適な生活ができるようになります。
Q:ほかに乾燥皮膚で注意しなければならないことはありませんか? 乾燥皮膚が軽度の場合は、お風呂上がりに適当な保湿クリームをつけると良い でしょう。こうした行為を、スキンケアと言います。お風呂での石鹸は使用し て構いません。ただし、乾燥皮膚のある人は、ごしごしこすったり、ナイロン 製の垢すりやへちま、亀の子たわし、健康たわしなどと一緒に使用しない方が 良いでしょう。石鹸を手につけて、その手でやわらかく洗う程度で充分です。 ごしごしこすらないと気が済まない人もいるでしょうが、この機会に止めて下 さい。石鹸はごく普通の石鹸で構いません。最近低刺激性の石鹸が出来ていま すので、皮膚科や薬局で相談してみるのも良いでしょう。薬用石鹸は原則とし て使用しないで下さい。
Q:予防のため、食べ物で皮膚の乾燥はなおせますか? 残念ながら、食べ物で、例えば油っこい物を多く食べても皮膚の乾燥は抑えら れません。皮膚の老化の一つであると理解して下さい。なお、最近では日光も この老化現象を促進させることが分かってきました。 次回は日光と皮膚についてお話ししましょう。