振動は振動感覚として感じられます。ある程度以上の振動では人体に障害を 与える場合があり、これを振動障害といいます。振動障害は体全体が揺れる 全身振動によるものと、振動工具などを使用しておこる局所振動によるもの の2つに大別されます。 全身振動による障害:大型トラックなどが通過した際生じる交通振動、コン プレッサーやプレス機械などを使用する工場から発生する工場振動、建設 工事の施工中に起こる建設振動などがその原因となります。これらの振動に より、睡眠の障害や不快感を感じるようになり、いずれは胃腸障害、内臓下 垂、脊柱の異常などが起こってきます。こうした振動障害は都市化に伴いま すます増える傾向があり、また「公害」として問題となってきています。い ろいろな防振対策が考えられてはいますが、これらの振動の伝わる経路が主 として地下の地盤ですから、振動を遮断することは並大抵のことではありま せん。また、振動源は同時に騒音を伴うことが多いので、「振動と騒音」と いう深刻な問題となってきているというのが現状です。 局所振動による障害:チェンソー、さく岩機、エアハンマーなどの振動器具 を用いる労働者に起こりやすい障害です。これらの振動機具を使用している と、手指血管の痙攣発作が起こり、発作的に手指が白くなり、同時にシビレ 感、知覚の鈍麻や不快感が伴ってきます。この症状はとくに寒冷になると強 くなります。このような現象を「職業性レイノー現象」あるいは俗に「白ろ う病」と呼ばれています。この症状は、手指に工具からの激しい振動を長時 間うけることが原因です。そのために、手指の末梢血管運動神経が影響され 血行障害が生じるとされています。予防法はできるだけ工具の振動を少なく すればよい訳ですから、振動工具の改良や作業時間の短縮などに注意するこ とが大切です。