3月はじめ、美容院で鏡の前の椅子に座るとふわっとケープを掛けられた。
いつものとは異なり全体が明るいサーモンピンクで襟回りからブイゾーンが
白になっているものだった。見慣れない色はとても新鮮に感じられ、鏡の
中から見返す自分の顔も華やいで見えるようだった。
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「今度のケープは春らしい色でとても素敵ですね」と言うと、美容師さんも
「はい、皆さん誉めてくださいます」と嬉しそうだった。そう言ったものの、
心の中で密かに(これってサリーちゃん、そっくりだわ)と思っていた。
大分前に放送されていたテレビ・アニメ『魔法使いのサリー』のことである。
サリーちゃんはいつもサーモンピンクの地色でヨーク部分が白い洋服を着て
おちゃめさんだった。主題歌のメロディまで浮かんできてもう少しでハミング
しそうになった。
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昨年、一昨年あたり、小さいお子さんの間で【ポケモン】や【アンパンマン】
が大人気だったと見えて良くカードを見せて貰っていた。これらの作品は余り見る
機会がないが外来へ来たお子さんに、「これがアンパンマンでしょ、こっちがショク
パンマンっていうんだよ」と診察室の机の上にずらっとカードを並べて説明してくれ
るお子さん、ハクション大魔王の人形を持ってくるお子さんもあり、ついつい診察
そっちのけという事態になりそうになることもしばしばある。
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一方、海外でも日本アニメの人気が高いことはニュースなどで報じられ、
キャラクターグッズも売れていると聞いていたがその実態は良く知らなかった。
ところが先日読んだ海外のミステリー(ジェフリー・デイヴァー著【エンプティ・
チェア】)の中でいきなり『ポケモンカード』という活字に気づき驚いた。
殺人・誘拐の疑いを受けた少年の部屋の調査をした鑑識官が「16歳の少年の
部屋にしては珍しくプレイボーイやペントハウスなどのポスターが1枚もないし、
マジックカードなし、ポケモンカードなし、ニンテンドウのゲーム機すらない。
皆から昆虫少年と呼ばれているだけあって、あるのは昆虫関係の本ばかり」という
台詞が出てきたのだ。このとき始めて、アメリカではこの年齢層にポケモンや
ニンテンドウなどがかなり廣く普及しているのだと認識を新たにした。
そして今朝、新聞に『韓国でもポケモン発売』との見出しを目にし、世界的に
有名なのだとつくづく思った。
ただ私が目にした限りでは、ポケモン、アンパンマンのカードを集めたり、
任天堂のゲーム機を持ち歩いているのはもっぱら小学校低学年のお子さんでこの
小説の登場人物と同年代の人から見せられたことがなかった。もっとも、15、
6歳ともなればカードやら何やらを他人に見せびらかす年頃ではないので、
日本での現実を把握していないので何とも言い難い。それにしても推理小説のなかに
ポケモンカードが登場して来たのには恐れ入った、きっとその人気は確かなもの
なのだろう。アニメ好きの私にとって日本のアニメが世界で活躍していると聞くと
とても嬉しい。ちょうどその本を読んだ頃、今年のベルリン映画祭で宮崎駿のアニメ
『千と千尋の神隠し』が最優秀賞【金の熊賞】を受賞したニュースを耳にした。
日本での興業成績もあの映画【タイタニック】を凌いだと聞くにつけ、
ビデオ化されるのを待ちわびている私である。