今回、韓日共催のサッカーW杯が開催されこの1ヶ月間、毎回テレビに釘付けになり
素晴らしい試合を堪能させて貰った。とうとう6月30日、ブラジルがW杯を手中に
収め終止符がうたれた。共同開催国である韓国の躍進はめざましく、日本も2回目の
出場で16強入りを果たせ嬉しかった。一方、審判の判定でいくつかのトラブルが
生じたことが残念だ。しかし、素晴らしい試合はこび、超一流の技術の数々はテレビ
観戦ながら充分満足できた。また、各キャンプ地での選手と地域住民の間でのほほえま
しい交流、各地で繰り広げられた各国サポーターの熱気など毎日テレビを見るのに
忙しかった。韓国のサポーター軍団「赤い悪魔」には及ばないが、日本のサポーターも
老若男女を問わずフェイスペインティングをし、ジャパン・ブルーのユニフォーム姿に
なって国旗を振っての応援がスタジアム以外の各地で繰り広げられたことに驚いた。
前々回の「ドーハの悲劇」、1勝もあげられなかった4年前のフランス大会に比べると、
今回の快挙はそれぞれに技術を磨いてきた選手たちとトルシエ監督との協力に負うとこ
ろも大きいと思う。この4年間日本代表がニュースになる度に選手と共にトルシエさんも
たびたび被写体として登場したが、私は彼の影のようにいつもそばにいるアシスタント・
通訳のダバディさんに目がいった。練習風景やW杯の試合を見るたびに、彼は単なる通訳と
言うよりもトルシエさん以上の激しい口調、手振り身振りを交えて怒鳴り散らす様子をみて
おかしかった。まるで彼自身が監督ででもあるかのように口角泡をとばしながらトルシエ
さんの言葉を選手に伝えるのを見るにつけ彼が好きになりいつしかテレビでは彼の姿を探す
ようになった。選手がゴールを決めた瞬間は監督より先に大きなガッツポーズで喜ぶひた
むきな様子は私にとって好感度大の人物の一人となりテレビにちらっとしか映らないのが
残念だった。彼はもともと映画雑誌【プレミア日本版】の編集部に所属していた人と聞く。
トルシエさんに頼まれて通訳を引き受けたが、自身の創造性を差し挟む余地のない仕事に
悩んだこともあったとか。でもある日映画『ブレードランナー』の通訳ロボットC−3POの
役目をしているのだと考え、以来トルシエ監督と選手達の間で大切なことを伝え、彼らを
結びつける役目をしているのだと気づいてからとても誇りに思えるようになったそうだ。
トルシエさんの契約切れとともにダバディさんに会えなくなるかと思うとちょっと淋しい。