すずめ
私が子供の頃、町中で見かける鳥で圧倒的に多いのがスズメとカラスだった。しか
し、最近家の庭ではオナガがもっぱら幅を利かせている。人間の生活習慣、庭木や雑
草の種類、近くに田畑や山林があるかなど様々な環境が変化したためだろうか。それ
とも、地域差によるものか(子供の頃は東京と京都、大人になってからは前橋在住)。
スズメとカラスは昔から人々の生活に密着して暮らす鳥とされていた。昔話「舌きり雀」、
童謡「雀の学校(チーチーパッパ、チーパッパ)」は、私たちの年代ではよく知られたも
のだった。また明治・大正時代は、日本髪や帯の結び方にも「ふくら雀」と鳥の名前が
使われていたほど人々の生活に密着した小鳥だったと思われる。
ところが近年、庭木が揺れていると思うとオナガのことが多く、スズメはほとんど
見かけなくなったような気がしていた。近頃のスズメは街には住まないのかと思ってい
たら、年明け頃から家の回りでスズメの鳴き声がするようになった。暖かい日、隣家の
雨樋に10羽あまりが並んでチーチーさえずっていた。買い物帰り、お隣の庭をよく見
たら庭木の下に小さな餌台が設けてあるのをみつけた。スズメが来ている理由はこれ
かも知れないと思った。容易にえさがとれない冬、餌台のえさをついばみに来ている
のか、とりあえずスズメが絶滅してしまった訳ではなかったようだ。
ところが、スズメを見かけるようになってから我が家のベランダの手すりに糞が
点々と付くようになった。それも半端な数ではない、白とカーキ色の混ざった米粒くらい
の糞が絣模様のように手すりにこびり付いているのである。それからというもの、毎日
拭いても拭いても元の木阿弥状態が続くのである。大きさから言ってスズメ以外の鳥の
ものとは思えない。お隣の餌台へ来たついでにちょっと羽をのばしていくのか、手すり
の具合が便意を催すのに好適なのか理由は不明だがとにかくすごい。連日『糞害に憤
慨』していた。カラス退治のように目玉風船をつけてみようか、アルミホイルを丸く切って
いくつも手すりに貼り付けたらどうかと真剣に考えた。
4月に入り春らしい暖かい日が続いたら、唐突に糞害がぴたりと止まった。全く汚
れてない日がもう2週間余り続いている。なぜなのだろう、暖かくなって小さな虫たちが
飛び始めたためか、他に良い餌場を見つけたのか、猫にいじめられて寄りつかなく
なったのか。糞害には悩まされたが、来なくなると安否が気遣われる。人々を煩わす
事なくどこかで元気にさえずっているといいなと思いながら今日もベランダをチェックし
ている。